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by bunkosha

猛者列伝より 2

初優勝 PLAYBACK1975.10.15 ― 広島東洋カープがもっとも燃えた日。

堀 治喜 / プレジデント社

  
 カープ初優勝戦士 その2 外木場義郎投手 
                    10.15の試合に先発した当時のエース
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『ノーコン投手』が成し遂げた三度のノーヒット 

ピッチャーの“勲章”はいくつかある。つぎに主なタイトルとそのホルダーの何人かあげてみよう。

最多勝利  通算    金田正一(巨人)  400勝
      シーズン  スタルヒン(トンボ) 42勝
            稲尾和久(西鉄)     〃
最高防御率 通算    藤本英雄(巨人) 1・90点
      シーズン    〃       0・73点
最多奪三振 通算    金田正一(巨人)  4490個 
      シーズン  江夏 豊(阪神)  401個

そうそうたる名前と、いまでは破格としか思えない記録がならぶ。どの数字も彼等の凄さ、というより凄まじさを語っているといえるだろう。

ところで外木場が、これらの偉大な投手たちから頭ひとつ抜きんでた記録のホルダーであることはよく知られている。

   ノーヒット・ノーラン試合 3回(完全試合1を含む)

これが外木場の持つ『日本最高記録』だ。
あの伝説の投手・沢村栄治も3回記録してはいるが、走者をひとりも出さない完全試合は達成していない。したがって外木場がタイトル・ホルダーといって間違いではないだろう。

ちなみに、前述の投手たちをみてみると、金田と藤本が完全試合1を含む2回、スタルヒンと江夏が1回、狭い平和台球場をホーム・グラウンドにしていた稲尾は1回も叶わなかった。

外木場が、最初にノーヒット・ノーランを達成したのは昭和40年10月2日、甲子園の阪神戦だった。相手投手は、シーズン終盤のこのゲームまで防御率トップの座にあったエースの村山。スコアは2対0で、3回に鎌田に与えた1四球だけの準完全試合だった。しかもこれがプロ入り初勝利。9試合つづけて中継ぎ、敗戦処理をしていたあとの突然の先発で成し遂げた快挙だった。

新人のノーヒット・ノーランは、プロ初年度の沢村栄治以来4人目だったが、初勝利は当時は画期的な記録だった。(その後昭和62年に、中日の近藤真一投手がナゴヤ球場で行われた対巨人のデビュー戦でノーヒット・ノーランを達成している)

そのスコアを記そう。
 
  球数96 打者28 回9 三振3 ゴロ7 内野フライ4 外野フライ13

三振は3つと少ないが、阪神のバッターは、外木場の伸びのあるストレートに詰まって17もの凡フライをあげていた。

「なんなら、もう一度やりましょうか」
試合後、外木場はそううそぶいたという。

これがホラでも冗談でもなく、外木場は本当に、しかもオマケに一試合余分にやってしまうのだから呆れるばかりだが、これだけの投手がそれからの三年間でたったの4勝しかあげていないのにも、やはり呆れるしかない。原因はノーコンと、それを解消できない練習嫌いにあったという。

三年で最高2勝、合計でも4勝だけだった外木場が、つぎの1シーズンで21勝する。昭和43年、根本睦夫がコーチから監督に昇格した年のことだ。それにしても中継ぎから先発にまわって、いきなりノーヒット・ノーランをやったり、2勝投手からいきなり20勝投手(この年21勝)になってみたり、外木場の“爆発力”には、ただただ驚くばかりだ。

その爆発力は、投球にもはっきりと認められた。いいときの外木場はまったく手がつけられなかった。43年9月14日、広島市民球場でやってみせた大洋戦での完全試合がそうだった。

中二日、疲れがとれないままマウンドにあがった外木場だったが、初回から球は走り伸びもあった。カーブは「一度浮いてから落ちる」感じで、バッターはのびあがってスイングしていた。内角へのストレートはえぐるようにナチュラルにシュートし、バッターの腰がひけたところでお得意の鋭く割れるカーブ。
「こりゃ打てんわい」と、中盤あたりから松原、近藤和、江尻といった主軸もお手上げ状態だった。9回は狙って獲りにいったらしく、きっちりと3者三振。16奪三振のセ・リーグタイ記録のオマケ付きでの快挙だった。運が味方したというより、“爆発力”でもぎとったような完全試合だった。

得点は前回のときと同じ、2対0。スコアはつぎのとおり。

  球数114 打者27 回9 三振16 ゴロ7 内野フライ0 外野フライ4
  
三度目は、四年後の巨人戦だった。開幕間もない4月29日の巨人戦(広島市民球場)で、王、長嶋がクリン・アップに座る強力打線を翻弄し、王に四球ひとつ与えただけのノーヒット・ノーランで三度目の快挙を記録した。

スコアは次のとおり。(広島3-巨人0)

  球数93 打者28 回9 四死球1 三振2 ゴロ9 内野フライ4 外野フライ12
 
「記録は破られるためにある」という。
しかし冒頭に並んだ投手たちの記録同様、外木場の『ノーヒット・ノーラン試合3回』、この記録が遠からず破られることを、だれも想像することはできない。

カープ猛者列伝 私家版

堀 治喜 / 文工舎


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by bunkosha | 2016-03-09 10:04 | カープ猛者列伝